京都ツアー報告・伏見稲荷大社編
皆様、こんばんは。しばらくぶりの更新になってしまい恐縮です。
先週末に実施した京都の寺社ツアーが無事に終了致しましたので報告さしあげます。
参加のできなかった方のため、少しだけこちらにも内容を公開したく、皆様の楽しみとなれば嬉しく存じます。
▼目次
(初稿:2019年11月14日)
伏見稲荷大社の御火焚祭
今回、はじめの2日間ご案内させていただいたのは、お稲荷さんの総本社、伏見稲荷大社さま。
お参りを兼ねて神様のお勉強ということで、稲荷山をお山する(巡礼参拝する)ときの作法にのっとり、一の峰、二の峰、三の峰へ順番に手を合わせて回りました。
より石段がきついルートになりますが、古くより修行の場となってきた稲荷山では、本来、これが正規の順路になるそうです。
初日、11月8日は御火焚祭という神事が行われる日で、ご本殿の前には人垣ができていました。
稲荷山のご神木である杉の枝に火がともされ、居並ぶ参詣者の頭上から空へと立ち上っていく様子は、平安時代に時が戻ったかのような風景でした。
伏見稲荷大社にかぎらず、同様に火を焚く神事は他の寺社でも行われていますが、神事の由来は神様を見送ることで共通しているようです。
春から田んぼへ降りて来ていた神様は、この煙とともにお山へ帰還する、といわれているそうですよ。
※神事につき撮影はNGとのことで、御火焚の写真ありませんがお許しください。
伏見稲荷大社の神様たち
お稲荷さんといわれると、一般的には白狐の姿を思い浮かべるのではないでしょうか。
あるいは詳しい方ですと、宇迦之御魂大神という五穀豊穣の神様を思い浮かべるかもしれません。
あまり知られていないかもしれませんが、稲荷山には主な神様だけでも、次のような複数の神様が鎮座しておられます。
【一の峰】
大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)
稲荷山で最も高い位置にある、末広大神の神様は大宮能売大神というそうです。皇居の守護神で、天皇の御殿に出入りする人間を見張っているといわれています。
【二の峰】
佐田彦大神(さたひこのおおかみ)
二の峰の青木大神は、佐田彦さんのお名前から、猿田彦神と同じ方では?といわれている神様ですが、学術的な確認はとれていないと聞きました。
厳しいけれど、熱心に信心する人には必ず応えてくださる神様なのだそうですよ。
余談ですが、確かここで不思議な形に固まったロウソクを見つけました。溶けた蝋が重力に逆らい、横へ向かって伸びているのですね。
お稲荷さんのもうひとつの姿である、み~さん(いわゆる蛇神)が現れるとき、こうした不思議が起きることがあるといわれています。稲荷山で発見したのは、私も初めてでした。
おそらく参詣者の方が奉納したものが、いつの間にか蛇のかたちに固まったのでしょう。さすが現役の霊場という感じがしました。
【三の峰】
宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)
三の峰・白菊大神に鎮まるのが、現在の伏見稲荷大社の主祭神とされている、宇迦之御魂大神様です。
昔の記録には稲霊である、と記したものもあるそうです。
伊勢神宮・外宮の神様である豊受大神(とようけのおおかみ)や、豊穣の神様・大気都比売神(おおげつひめのかみ)や保食神(うけもちのかみ)と同じ神様ともいわれています。
名前の挙がった神様たちは、すべて食べ物の神様である点が共通ですね。
しかし、私にとってそれ以上に興味深がったのは、伏見稲荷大社を創建したという秦氏との関係でした。
秦氏は大陸から渡って来た、いわゆる渡来人であったというのが通説です。
京都の北部、城崎温泉のあたりが秦氏の原点だったとの話があるそうで、これは天女伝説のある地域と重なっていました。
しかも、秦氏は酒造りの技能を持っていたといわれ、伝説では人間に酒造りを教えたのが天女である、としています。
もしかすると、お稲荷さんは天女伝説にも関係があるかもしれませんね。
伏見稲荷で学んだこと
お稲荷さんツアーを終えて感じたのは、関東と関西の、信心に対する姿勢の違いでした。
何というか関西地方には、神仏の話題に対し、基礎体力のようなものがあると感じます。
つまり、見えない世界に過剰に足を取られることもなく、かといって神仏を粗末にすることもない、バランス感覚に優れているのですね。
それはきっと、身の回りに「先生」と呼べる人が多いからなのかもしれません。
関西には数々の霊場がありますから、阿闍梨さまもいれば、オダイさんもいる。アドバイスをくれる人を、見つけやすいのでしょう。
今回の参加者様の中には、古来の稲荷信仰を守っている方や、ご実家が神事に携わって来た方など、伝統的な視点を引き継いでいる方が多くおられ、私自身も学ぶことがたくさんありました。
お稲荷さんとお供え物の話
私たちのツアーでは、お山をするにあたりお供え物を用意しました。
理由はいくつかあるのですが、ひとつは時折、「お稲荷さんにお参りして大丈夫なの?」など、参拝後に何か怖いことが起きそう、と心配している方がおられるためでした。
実際、お参りをしただけで神様から何かをされることはない、と私は思っておりますが、参加者様の不安解消と、礼節を重んじるお稲荷さんへのご挨拶としたかったのです。
私たちのツアーでは、三つの峰に鎮座する偉い神様を中心に、お供えを奉納して参りました。
知人のアドバイスに従い、私が購入したのは最中とお饅頭。西陣のお菓子司・塩芳軒さんの銘菓でした。
豊臣秀吉が建てた聚楽第跡地に程近い塩芳軒さんでは、これにちなんだ聚楽というお饅頭があるのですね。秀吉は熱心な稲荷信仰をしていたことでも知られています。
お供え物を勧める理由
ところで、なぜお供えが不安解消になるかといえば、お稲荷さんは上下関係がしっかりしているからです。
万が一、悪戯があるとすれば、それは神様ではなくて野狐と呼ばれるものでしょうから、偉い神様に丁寧なご挨拶をして守っていただけるように配慮しました。
ちなみに、ご祈願のための参拝であっても、お稲荷さんにはお供え物があった方がいいそうです。
ちゃんとした御眷属にとってお供え物は元気の源になり、人間のために頑張りやすくなる、といわれているそうですよ。
それに万が一、神様になりすました良くないものが出てきても、先に対価を渡すことで、高額利子の請求をさせない予防線になるんですね。
参拝後のお供え物については、いわゆるお下がりと一緒です。ありがたく、お稲荷さんコースの参加者さまと分け、お土産とさせていただきました。
なお、ご自分でもお供えをしたい方は、現在の稲荷山では開封せずに持ち帰ることが約束になっているようです。
山内の拝殿にはお皿がないため、半紙などの下敷きを用意するのがお勧めですよ。
以上、お稲荷さんツアーのレポートでした。
ご参加いただいた皆様、石段がきつい順路からの参拝となってしまい、誠にお疲れ様でした。重ねてお礼申し上げます。
次回、鞍馬と貴船コースについても簡単に紹介させていただきます。
それでは本日も最後までお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!
コメントを開く (3)
新田さま
ツアーではお世話になり、ありがとうございました。わざわざ資料まで作ってくださり、またツアー後にはこのようなまとめの記事までアップしてくださって、本当にありがたいです。
母方の祖父が神主で神社をしたので、神事は比較的身近なことではありましたが、改めてお話を聞くと学ぶことが多くて、とても有意義な時間でした。
新田さまとは初対面でしたが、とても気持ちのよい時間を過ごせました。同行させていただいた他の参加者の方々も、気持ちのよい方ばかりで、素晴らしい一日となりました。
また機会がありましたら、別の寺社仏閣のツアーにも参加させていただきたいので、そのときは、どうぞよろしくお願い致します。
本当にありがとうございました。
坂本さま
こちらこそ、素敵な方の集まるツアーが実現したのは、むしろ参加してくださった皆様のおかげですので、本当に感謝しております。
坂本様が、神様に向き合うときの真摯な姿勢は、本当に美しく。私ももう少しちゃんとしようと反省しておりました;
ツアーを通して、私もたくさんの勉強をさせていただきました。関西はすばらしい寺社がいっぱいで、できればまた他のコースでも企画をしたいと思っております。
機会をいただけるようでしたら、是非またお会いさせてくださいませ。ありがとうございました!
文末の「寺社仏閣」を「神社仏閣」に訂正させていただきます。