万葉集の未解明の和歌の謎

皆様、こんばんは。こちら、過去のリライト記事になります。

初稿の時はややこしいので省略した易経にもとづく和歌の解釈について、なるべく簡単に追記しました。

古代ミステリーに興味のある皆様、よろしくお付き合いくださいませ。

 

▼目次

(初稿:2019年4月7日、最終更新:2019年11月30日)

 

万葉集の未解明の和歌

さて、今日は以前にメモしておいた伊勢神宮に関連した話題をお送りします。

今年2019年5月より、新元号「令和」が決定しましたね。

万葉集にちなんだ元号だそうで、万葉集そのものにも改めて関心が寄せられているとうかがいました。

万葉集といえば、誰でも一度は耳にしたことがある日本最古の和歌集です。

しかし、この日本文学の定番ともいうべき古典に、実はいまだ解明されていない和歌があること、ご存知でしたか。

それが下記の2首で、いずれも持統天皇の作品とされています。

第160番

向南山 陳雲之 青雲之 星矢(字:上にム)離去 月離去
⇒神山にたなびく雲の青雲の星さかりゆき月をさかりて

第161番

燃火物 取而塁(字:下は衣)而 福路庭入澄不言八 面智男雲
⇒燃ゆる火も取りて包みて袋には入るといわずや ???

 

謎の和歌の作者は持統天皇

読み仮名だけでも解明された160番はともかく、161番については未だに解明されていないそう。

最後の面智男雲の4字は、読み仮名さえ不明とされる難読部分です。

この難しい和歌が生まれたのは、天武天皇が病で亡くなり、持統天皇が皇位継承をしようとする、その最中でございました。

いずれの和歌も、亡き夫に持統天皇が送ったものとされますが、一説には陰陽師に代筆させたともいわれます。

天武天皇、持統天皇の時代、陰陽道は最新の学問と考えられていたので、色々な場面に陰陽五行説の影響が見られるのですね。

実はこの2人の天皇は、伊勢神宮のご祭神・天照大神様を皇室の祖神と定めて、今日まで残る伊勢神宮の制度を整備した当事者でもありました。

 

陰陽師の占いと関係あり?

結論から申せば、持統天皇の和歌を理解するヒントは、陰陽師の星占いにあるのではないか、と私は考えています。

理由は2つ。一つ目はこの時代、物事の判断のために占いが使われていたこと。二つ目は、持統天皇の夫であった天武天皇は、日本で最初に陰陽寮という組織を設置して、天体観測を始めた方であること。

第160番の歌は、見てのとおり星、月、雲と空にあるものが並べられていますね。現代語訳を見ると、「青い雲がたなびく」情景を詠んでいます。

時代が前後しますが、陰陽師の占いによれば、これは天下泰平や五穀豊穣などを表す幸運の相とされていたそうです。

民俗学者さんによれば、持統天皇は、東洋思想の八卦では「坤」(=陽の土属性、象徴は山)にあたる性質を持っていたはず、とのこと。

この通りなら、冒頭の南向山とは、天武天皇の治世を振り返る、持統天皇ご自身のお姿ではないかと考えられますね。

 

和歌にみる新天皇の決意

天武天皇の崩御後、政権を引き継ぐ決意をした持統天皇は、天皇の居場所である北に、自らが立っている様子を思い浮かべたのでしょう。

天皇の座(北)に立とうとする持統天皇(山)は、南向山の表現にぴったりですね。

亡き夫・天武天皇(=太陽。後で詳しく説明いたします)を偲んで空を見れば、北極星(天皇に権威を授ける神様)が見え、月(太陰)も揃って顔を出している。日月星の揃った空、たなびく青雲は、これから始まる持統天皇の御代を祝福している。

言霊のパワーが信じられていた時代に、このような新政権への希望を、和歌に託したとは考えられないでしょうか。

 

ヒントは易経にある?

ここまで初稿のままの内容ですが、実は上記の他にも、私なりにこんな意味かな?という心当たりがありましたので、改めて追記いたします。あくまでも私個人の推察なので、話半分に受け止めてくださいませ。

実は最初にこの2首を見た時、私が連想したのは易経でした。

特に目についたのは第161番、離為火という炎を象徴する卦を連想したのです。離為火は、上下に火を並べた様子を表現する結果。その意味するところを先におさらいしますと、

【火卦が象徴するもの】

・炎、太陽、虹
・離れる動作、何かにつく行為
・方位:南

火や太陽はもちろん、離の字のとおり、AがBから離れる行為を指すほか、「離(り)は麗(り)なり」と申して、麗(つ)く=着火する意味)をも象徴します。

麗く=就くと連想できることから、易では「大人もって明をつぎ四方を照らす」と書かれているそうです。つまり、「立派な人は善いことを継いで世の中を明るくする」という教訓を説く卦なのですね。

これだけ見ても、離為火という卦が、天武天皇の後を継いで即位する持統天皇の状況を、ピッタリ表しているのが分かるのではないでしょうか。

第160番の歌で繰り返される離の字も、火の意味を強める意図であったのではないかと思います。

また北にそびえる山を、わざわざ「南向山」と表現したのも、離為火に一致する南の文字を入れることで、少しでも火を象徴するものを多く詠みこもうとしたのでは?と感じました。

 

和歌に込められた呪い

ちなみに易では陽を「―」、陰を「- -」の記号で表すことになっています。この記号による表記だと、火は、陽・陰・陽なので、次のような形になります。

陽に挟まれて真ん中に陰がある。

つまり、袋や箱など内側が空洞になるものは、火の卦が象徴するアイテムになるんですね。

第161番の和歌には、火を包んで袋に入れる、とありますから、離為火の象徴をそのまま読みこんだのではないか、とも考えました。

天武天皇はお誕生日などから、五行でいうと陽の火に例えられる方だったといいます。天武天皇=火だとすれば、この和歌を読むことで持統天皇は、天武天皇の持つ火のエネルギーを手にすると宣言したことになりますね。

とすればこれらは、持統天皇ご自身が帝位を継承するぞ、王権のパワーを引き継ぎ新たに国を治めるぞ、と宣誓するための呪い(まじない)だったとは考えられないでしょうか。

いずれにせよ、この2首の解釈が難しいのは、詩的な意味よりも呪歌としての完成度の高さを重視して作られたからではないか、と私は感じております。

 

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以上、私の拙い知恵をしぼり万葉集の謎へと迫ってみましたよ。

謎を解明してみたい!と思われた方は、ぜひご自身でも挑んでみてくださいね。

もし、面智男雲の部分を解明したら、世紀の大発見になるやもしれません。これは、という答えが見つかりましたら、私にもご教示くださいませ。

本日も最後までお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!

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