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中国合作映画「空海-ku-kai- 美しき王妃の謎」感想

皆様、こんばんは。

先日、劇場公開されていた中国合作映画「空海-ku-kai- 美しき王妃の謎」が、DVD化されるようですので、こちらに映画レビューを記そうと思います。

 

不思議なのですけれど、私がこの作品の存在をはっきりと知ったのは、京都に遊びに来てくれた友人のおかげ。

京都に来る直前に観て来たとのことで、私も東京へ戻るころに上映が続いていれば、行ってみようかなと思っていました。

新宿の角川シネマさんで、中国語音声の字幕版が観られるというので、そちらへ。

映画館に行ってから知ったのですが、こちらの作品、原作は小説だったのですね。

それも、陰陽師シリーズで有名な夢枕獏先生の作品。

ちょっと怪しい映画レビュー、よろしければお付き合いくださいませ。

 


空海-ku-kai- 美しき王妃の謎レビュー

あらすじを言ってしまうと、まだご覧になっていない方の邪魔になるかと存じますので、私の独り言を中心に申し上げたいと思います。

脳内をすでに密教に浸食されていることもあって、私の場合、ここにしか書けない感想が多くございました。

映画の全体的な印象としては、ファンタジーの要素が強い、映像美を楽しめる作品でした。

鬼や魔物の跋扈する唐の都・長安で起きる怪異を、探偵のごとく空海と白楽天が解決していくミステリーですね。

主役の空海を演じる俳優さんは、日本人。それでも劇中では上手に中国語を話されていて、感心してしまいました。

中国語は英語以上に発音が難しい、と中国に留学していた知人数名から聞きましたので、お芝居として使用するのであれば、相当な努力があったのではないでしょうか。

個人的に注目してしまった場面は、ヒロイン・楊貴妃の存在です。

彼女は異国人の血を引き、それゆえに唐の皇帝・玄宗の寵愛を得たという説明が入る場面があり、楊貴妃を演じる女優さんが登場すると、なんと西洋系の女性。

黒髪でしたが、ドイツ人かな?という容貌をしておられました。

このため私としては先日、一生懸命書きました叶姉妹の前世の話を思い出してしまい、ヒロインが登場するたびに、恭子さんの姿が脳裏をちらほらしてしまいました。

恭子さんの前世が楊貴妃と言いたいのではありませんよ。

(恭子さんの前世はカザフスタンなどの騎馬民族系の血を引いていた気がしています。)

ただ、1000年以上も昔の中国の後宮に、混血あるいは純潔の異民族が召し上げられる例が事実あったのではないか、という感慨を覚えた次第です。

それから、ちょっとうるさい注文をつけるなら、せっかくファンタジー作品としているので、もう少し「お大師様」と呼ばれた空海の力量を感じられる場面が見たかったなあとも、正直なところ感じました。

こちらの作品では、全編を通して、猫の亡霊が空海の目の前に現れるんですよ。

なので、最初に空海と猫が顔を合わせた場面から、お大師様が九字を切っているところが見られるのか!と前のめりに期待してしまったのですが、残念ながら叶わず。

ちなみに九字というのは、テレビなどでも見かける「臨兵闘者・・・」と、気合をかけながら縦横に空間に斬りつける技法のことですね。

密教には、悪霊などに対して使う不動金縛りの法と呼ばれる行法があり、これために九字を斬ります。

すると悪霊の動きを止め、捕縛できるのだそうです。

密教僧に限らず、修験者、祈祷師、巷の霊能者の方にも共有されている技術で、生きた人間の動きまで止められる方も、居られるのだとか。

留学する前から、空海は山岳修行に明け暮れていたことで有名ですから、長安に居た時点で九字くらいは習得していたはず、と勝手に期待してしまいました。

伝記的な内容を期待せず、異国風のファンタジーかつミステリーとして鑑賞するのであれば、楽しめる作品ではないでしょうか。

全編が大変コンパクトにまとめられているので、人によっては展開が早いと感じるかもしれません(友人はそう言っていました)。

ストーリー自体をよく理解したい方は、原作小説を読む方が話の筋は分かり易いのではないかと思います。

原作タイトルは「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」全4巻。

 


映画に描かれなかった弘法大師空海

なお、こちらの映画は空海がお師匠様となる密教僧・恵果に弟子入りするところまでで終わっています。

しかし、空海の生涯について語るなら、本当に面白いのはこの先だと私は思っているので、簡単に紹介させていただきますね。

空海の人生の中でも、最大級の奇跡と呼べる実話が、実はここから展開していくんですよ。

師匠になった恵果和尚にとっても、空海という弟子は特別な存在だったよう。

史書の伝えるところによれば、恵果は並居る弟子を差し置いて、出会ったばかりの空海に密教の秘儀を伝授することを決断したそうです。

これは、恵果が空海を特別な資質を持つ人間であると見抜いたから、とも言われます。

初対面の外国人を自分の後継者に選んだということですから、尋常ならざる展開です。

更にすごいのは、空海が伝法灌頂という儀式を受けたときの話。

灌頂というのは、簡単に言うと卒業証書の授与式のようなもので、師匠の教えを弟子がマスターできました、と認定するために行います。

この時に、弟子はいろいろな仏さまの描かれた曼荼羅に向かって、目隠しをしたまま花を投げることになっています。

そして、花の落ちたところに描かれていた仏さまが、弟子を生涯に渡り守護してくれるといのですが、なんと空海の時は、2回行った儀式で2回とも、大日如来のうえに花が落ちたそうなんですよ。

これには、師匠の恵果まで驚嘆したとか。

大日如来といえば、密教において最も尊い仏さまとされ、万物はこの方の化身ともされる究極の存在。

目隠しを取った時、空海はいかほどか嬉しかったことでしょう。

命の危険を冒しても海を渡り、日本の法律を破っても帰国して密教を伝えようとした空海の行動は、社会常識的に見れば決して、優等生の生き方ではありません。

特に、帰国に関しては国の規定を破るので、一種の違法行為でした。

それを理解したうえで、母国に戻ると決断した空海の心の中には、きっとこの時の大日如来の姿が浮かんでいたのではないのかなあと、私は思うのです。

何があっても大丈夫。
きっと、仏が導いてくれる。

そういう、現世の道理を超越した自信があったからできた決断ではないのかと思います。

空海にとっての仏が、信仰から確信に変わった瞬間を象徴しているようなこの逸話、数ある伝説の中でも、私は好きでたまりません。

帰国した空海はやはり、違法行為を咎められてしまうのですけれども、彼の生涯のあらゆる艱難辛苦は、この一瞬で報われていたのかもしれませんね。

 

以上、本日も最後までお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!

 

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